仙台市交通事業経営計画 2026-2035(令和8~17年度)

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令和3年3月に策定した前計画(仙台市交通事業経営計画2021-2030)は、国が地方公営企業に策定を要請している「経営戦略」として位置付け、5年ごとの見直しを行うこととしていました。
しかし、計画策定当時の想定を上回る、コロナ禍の拡大・長期化による乗車人員の減少や減収補てんのための多額の企業債の発行など、収支見通しに大きな乖離が生じたほか、昨今の物価高騰等の影響による経営環境の急激な変化を踏まえ、前計画の計画期間の後半5年の中間見直しではなく、
・ 想定を上回るコロナ禍による影響
・ 前計画策定時点から大きく変化した事象
・ その他新たに盛り込むべき視点
を踏まえた「新たな10年間の経営計画」とそれに基づく長期収支を策定することが必要と判断し、令和8年3月に全面改定を行いました。
目次
1 経営の基本方針
本市の人口減少局面の到来や年齢構成の変化、経済情勢に起因する物価変動、脱炭素の取組みへの要請など、事業を取り巻く環境が様々に変化する中にあっても、地方公営企業法の基本原則に掲げられる「常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進する」ことを踏まえ、安全・安心を最優先に、快適で便利なサービスを提供する交通事業者としての役割を果たしながら、将来にわたり仙台のまちづくりに寄与するため、持続可能な事業運営を目指します。

2 財政目標
市バス
- 経常収支の均衡
- 資金不足比率20%未満を維持
- 路線の赤字補てん等に係る一般会計補助金額の縮減
持続的な事業運営を目指し、「経常収支の均衡」を目標とします。
路線のあり方見直しによる運行効率の向上、運賃体系の見直し、資産の有効活用などの「中長期的な取組み」により、営業収支を改善させるとともに、路線の赤字補てん等に係る一般会計補助金を縮減し、適正化していきます。
一層の収支改善が必要となるため、令和8年10月の運賃改定以降も、運賃体系の見直しを行うことで増収を図る必要があることを認識し、検討を進めていきます。
地下鉄
- 経常収支の黒字化と黒字の継続
- 累積赤字の低減
- 資金収支の均衡
今回の経営計画期間中に経常収支を黒字化し、その後も黒字経営を維持します。
単年度黒字化に伴い、累積赤字は徐々に低減されていく見通しですが、累積赤字の早期解消に向けては、収支状況に応じた適切な運賃水準の検討を継続するなど、黒字幅の拡大を図っていく必要があるほか、将来的な資本構成のあり方などについても検討していきます。
計画期間を通じて、財政健全化法上の資金不足額を発生させないよう努めます。
3 経営戦略・戦略に基づく施策
基本方針と財政目標を踏まえ、市バス・地下鉄の両事業で目指すべき姿を示す戦略を定めます。
なお、具体的な取組みの検討にあたっては、「EBPM(証拠に基づく政策立案)」の観点を重視し、データ等を根拠とした取組みの企画・検討を行います。
戦略Ⅰ 安全・安心の推進
目指すべき姿
交通事業者として最大の責務である輸送の安全を確保するとともに、だれもが、いつでも安心して利用でき、信頼される公共交通手段であり続けるために、お客さまの安全・安心のための利用環境づくりを推進します。
| 施策1 安全運行の確保 | 運輸安全マネジメント制度に基づき、安全管理の継続的な改善に取り組むとともに、関係機関と連携した啓発活動を実施し、安全・安心な利用環境づくりを推進します。 |
| 施策2 危機・自然災害への対応 | 地震や大雨等の災害時及びテロ等の危機的状況の発生時にも、お客さまの安全が確保できるよう、適時適切な情報提供を行うとともに、関係機関と連携した継続的な防災訓練等、平時の備えを強化します |
| 施策3 施設設備の計画的な維持更新 | 市バス・地下鉄の車両や設備について、安全性を確保し将来にわたり良好に維持できるよう、計画的な保全・更新に取り組むとともに、脱炭素への対応や経常的な経費の削減にもつなげます。 |
| 施策4 だれもが安心して利用できる環境整備 | 年齢や性別、国籍、身体の状況などに関わらず、だれもが安心してご乗車いただける環境整備に取り組みます。 |

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戦略Ⅱ 快適で便利なお客さまサービスの提供
目指すべき姿
お客さまの快適性・利便性を高めるため、丁寧な接遇を徹底するとともに、市バスと地下鉄が一体となった本市の交通体系を生かし、さまざまなニーズに対応したサービスを提供することにより、お客さまに選ばれ、求められる市バス・地下鉄を目指します。
| 施策1 接客サービスの向上 | 丁寧な接遇を徹底することで、お客さまに気持ちよくご利用いただき、より多くの方に愛され、信頼される市バス・地下鉄を目指します。 |
| 施策2 利便性の高い運賃・乗車券制度 | お客さまにとって利便性が高い、魅力ある運賃制度や乗車券の販売を実施することで、日頃の交通手段に市バス・地下鉄を積極的に選んでいただくとともに、新たな利用者層の獲得を目指します。 |
| 施策3 データに基づく施策検討 | 既存のオープンデータや市バス・地下鉄の乗降データ等を活用・分析し、お客さまの乗車行動やニーズに合わせた実効性のある事業立案と現状評価に基づく改善を行います。また、交通局が保有するデータのオープンデータ化を推進し、様々な主体と連携したサービス提供につながる環境整備を行います。 |
| 施策4 多様化するニーズと「分かりにくさ」解消に向けた新たなサービスの提供 | 多様化するお客さまのニーズに合わせ、キャッシュレス決済等のICT技術を活用したサービスや、市バス・地下鉄、その他交通手段との有機的な連携による快適で便利なサービスを提供します。また、公共交通を利用する際の「分かりにくさ」を解消する手軽で分かりやすい運行情報提供に取り組みます。 |

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戦略Ⅲ まちの将来に向けた行動
目指すべき姿
交通事業者として、将来にわたって公共交通ネットワークの基幹を担い続けるとともに、まちの回遊性向上や交流人口拡大による地域経済の発展、多様性への対応など、持続可能なまちづくりを支えるために行動します。
| 施策1 持続可能なバス路線網の確立 | 市バスが将来にわたり公共交通としての役割を果たしながら、安定的な事業運営を続けることができるよう、IC乗車券等から得られるビッグデータを分析するとともに、地域特性に応じた路線のあり方を検討し、分かりやすく利用しやすい路線網の確立と、運行効率の向上を図ります。 |
| 施策2 交通政策との連携 | 仙台市の公共交通ネットワークの基幹を担う交通事業者として、公共交通利用促進や、地域の移動手段確保、新技術を活用した交通システムの促進等、本市交通政策の指針である「せんだい都市交通プラン」や「地域公共交通計画」に掲げる施策と連携した取組みを積極的に行います。 |
| 施策3 福祉政策との連携 | 交通局バリアフリー特定事業計画等に基づき、だれもが利用しやすい安全・安心な公共交通の実現に向け、設備等のハード面及び職員教育・啓発活動等ソフト面の両面について、高齢者・障害者・子育て支援団体など多様な関係者との意見交換を継続的に行いながら取組みを推進します。また、高齢者や障害のある方、子育て世代の公共交通利用を促進します。 |
| 施策4 観光政策との連携 | 仙台市の観光政策と連携し、観光・インバウンド客の公共交通利用促進と、まちの回遊性向上に資する取組みを進めるとともに、新たな市バス・地下鉄の利用シーンの創出に向けた取組みを推進します。 |

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戦略Ⅳ 持続可能な経営基盤の確立と事業運営
目指すべき姿
将来にわたり、市バス・地下鉄事業を安定的に運営できるよう、財政目標の達成に向けた収入増加策の展開や事業運営の省力化・効率化などの経営改善の取組みを進めるとともに、人財の確保や職員が意欲を持って能力を発揮できる職場環境づくりを行い、経営の健全化を実現します。
| 施策1 経営状況の見える化 | 交通局の経営状況について幅広く情報提供を行うことで、経営改善に向けた様々な取組みの必要性等をお客さまにご理解いただけるように努めます。 |
| 施策2 事業の省力化・効率化 | 施設設備の更新や新規投資にあたっては、厳しい経営状況を踏まえ既存事業の見直し、事業規模や事業費の精査等を実施することで投資の適正化を図ります。また、デジタル技術の活用や民間事業者との連携を通して、経営の効率化を推進します。 |
| 施策3 収入増と経営状況の健全化 | 経済情勢等に起因する収支状況の変化に応じ、運賃体系・水準の検討を行うほか、資産の有効活用や広告料収入の確保等、収入増に向けた不断の取組みを行っていくことで、安定的かつ持続可能な経営を目指します。 |
| 施策4 乗車人員の確保 | 将来的な人口減少局面を見据え、未来の市バス・地下鉄のお客さまとなるこどもたちや、今まで公共交通を利用する機会がなかった方々に働きかけるための、戦略的な営業活動を行います。また、新たな市バス・地下鉄の魅力創出につながる取組みを検討・実施します。 |
| 施策5 人財の確保・育成 | さらなる労働人口の減少が見込まれる中、職員の確保に向け、採用活動の強化はもとより、一人ひとりが仕事に誇りを持ち、性別や年齢、障害の有無などに関わらず、能力を発揮できる職場づくりを進めます。また、次世代の職員の育成に加え、こどもたちや若者に市バス・地下鉄の仕事の魅力を伝える活動を行うことで、将来の担い手の確保・育成にも努めます。 |

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4 実施計画 (前期:2026-2030)
戦略に基づく施策を着実に実現していくため、本経営計画期間の前半5年間(2026-2030、令和8~12年度)での具体的な取組みの方向性と実施する個別事業を掲載します。
また、取組みによって目指すべき方向に進展しているかを測る指標として、施策ごとに「数値目標」を設定し、毎年度の進捗状況確認の際に集計・公表します。
数値目標の達成状況等を確認し、必要に応じた事業の見直し・追加を行っていきます。
戦略Ⅰ 安全・安心の推進
戦略Ⅱ 快適で便利なお客さまサービスの提供
戦略Ⅲ まちの将来に向けた行動
戦略Ⅳ 持続可能な経営基盤の確立と事業運営
数値目標
社会的要請への対応
5 経営状況モニタリング指標
財政目標の達成状況や経営の効率性を測る指標として、経営状況モニタリング指標を設定します。
毎年度の進捗状況確認の際に集計公表していきます。
| 指標 | 指標の説明 | 望ましい 方向 | 現状 (令和6年度) | 備考 | |
| 市バス | |||||
| 財政目標 | 経常収支比率 経常収益÷経常費用 | 乗車料収入や一般会計繰入金等の収益で、費用をどの程度賄えているかを表し、100%未満の場合、経常収支が赤字となります。 | ↑ | 89.1% | 収支均衡(100%以上)の達成を図る |
| 資金不足比率 資金不足額÷営業収益 | 事業規模(営業収益)に対する資金不足額の割合で、20%以上となると、法の定めにより「経営健全化団体」となります。 | ↓ | 4.5% | 計画期間を通して20%未満を維持 | |
| 他会計負担比率 他会計補助金額÷経常費用 | 仙台市一般会計繰入金への依存度を表し、低いほど経営の自立性が確保されています。 | ↓ | 26.6% | 低減を図る | |
| 経営の効率性 | 営業収支比率 営業収益÷営業費用 | 乗車料収入や広告料収入等の営業活動から生じる収益で人件費や燃料費等の営業費用をどの程度賄えているかを表します。 | ↑ | 62.5% | 上昇を図る |
| 一日平均乗車人員 | 一日あたりの乗車人員を表します。 | ↑ | 95千人 | 令和12年度 97千人を見込む | |
| 走行1kmあたりの収入 営業収益÷実車走行キロ(※) | 市バスが1㎞走行するあたりの収入を表し、値が高いほうが効率よく収入を得られています。 | ↑ | 512円 | 上昇を図る | |
| 地下鉄 | |||||
| 財政目標 | 経常収支比率 経常収益÷経常費用 | 乗車料収入や一般会計繰入金等の収益で、費用をどの程度賄えているかを表し、100%未満の場合、経常収支が赤字となります。 | ↑ | 97.8% | 計画期間中の黒字化、黒字維持を目指す |
| 累積損益 | 毎年度の損益(赤字又は黒字)を通算したものです。 | ↑ | ▲986.1億円 | 累積赤字の低減を目指す | |
| 資金不足額 (流動負債-流動資産) -解消可能資金不足額 | 財政健全化法上の資金の不足額を表す値です。 | ↓ | なし | 計画期間を通じて発生しないよう努める | |
| 経営の効率性 | 営業収支比率 営業収益÷営業費用 | 乗車料収入や広告料収入等の営業活動から生じる収益で人件費や動力費等の営業費用をどの程度賄えているかを表します。 | ↑ | 83.8% | 上昇を図る |
| 一日平均乗車人員 | 一日当たりの乗車人員を表します。 | ↑ | 255千人 | 令和12年度 278千人を見込む | |
| 走行1kmあたりの収入 営業収益÷車両走行キロ | 地下鉄1車両(現在は1編成が4車両)が1㎞走行するあたりの収入を表し、値が高いほうが効率よく収入を得られています。 | ↑ | 1,510円 | 上昇を図る | |
※営業収益及び実車走行キロは総務省が各公営企業分を取りまとめる「経営比較分析表」に使用する数値を用いており、「るーぷる仙台」に係るものを除く。
6 策定過程
コロナ禍等による急激な経営環境の変化を踏まえ、前経営計画の見直しに早期着手するとともに、令和8年度に実施する市バス運賃改定など経営改善に向けた取組みの検討を行うため、令和5年7月に外部有識者5名から組織する「仙台市交通事業経営検討委員会」を設置しました。
令和7年2~3月には、計画に掲載する取組みの参考とするため、「市バス・地下鉄アンケート」を実施したほか、計画の改定作業が本格化する令和7年4月からは、2名の有識者をさらに追加委嘱し、専門的知見に基づくご意見や助言をいただきながら検討を進めました。
また、本計画中間案に対するパブリックコメントの手続きにより、広く意見を募集しました。